私の母の弟は、いつも自分は他の人と違うのだ、選ばれた人間なのだと語るちょっと風変わりな人でした。姉である私の母とはあまり仲良くはありませんでしたが、二人きりの兄弟であるので母は叔父の事を気にはかけていました。

 

母の実母が高齢になったとき、田舎であること、跡を継ぐものがいないことなどからおいおい家を売却するという方向になったのですが、東京で整体院を開業している筈の叔父と連絡がとれなくなっていました。いわゆる失踪ですが、探偵に調査を依頼したところ、運転免許証を更新している形跡があるため、生存はしているようだという所までしかわかりませんでした。

 

いよいよ祖母が亡くなり、家を片付けていると、押し入れの奥から裏表紙に叔父の顔写真の印刷された、ハードカバーの本が150冊以上、真新しい状態で置かれてあるのを見つけました。

 

内容は、宇宙のパワーと人間の関係であるとか、自分は宇宙と交信をしていてそのパワーをコントロールすることができるだとか、宗教的ともファンタジーともとれるような内容でした。

 

写真は確かに叔父なのですが、執筆者名は聞いたことも無い名前。宇宙的な感じを並べた、叔父のペンネームだと思われました。九州のある山にて新興宗教を広めていると解説にあり、自費出版した布教本と思われました。

 

叔父は祖母の葬儀にも姿を現す事はありませんでした。母の実家は結局、区画整理で買い上げられる事になり、母が病気で倒れてからは自治体に全てをお任せしてしまったので、そのご叔父がどうなったかは結局わかりませんでした。今でも九州の山で、宇宙のパワーを自分に取り込んでいるのでしょうか。まっさらな叔父の本は、とっくに処分してしまいましたが。